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環境漁協宣言――矢作川漁協100年史

著者: 矢作川漁協100年史編集委員会 著

本体価格: \3,800(税別)
サイズ: A5判上製 478頁
ISBN: 4-8331-0523-3
発行年月: 2003年12月刊

品切れ
 

■内容説明

漁業協同組合の歩みと、近代化の過程で破壊された川の生態系や川とともにあった人々の暮らしをたどりながら、これまで省みられなかった河川史を再構築する。日本ではじめて描かれた河川漁協の百年史。河川環境保全の関係者必読本。
 

■目次

美しい矢作川の創造をめざして
――創立一〇〇周年記念誌『環境漁協宣言』の出版によせて
矢作川漁業協同組合 代表理事組合長 澤田 壽

環境漁協宣言

序 章 河川環境を「生物生息環境」と見る目

第1章 [座談会]環境漁協への展望

第2章 川の権利をめぐって
1 明治期の矢作川
資料探しの旅
明治期の漁業政策
矢作川の漁業
明治用水の進出と矢作川漁業保護組合の誕生
明治漁業法と漁業保護組合
2 水力発電の影響
漁業権なき漁業組合
矢作川における電源開発と稚アユ移植放流の開始
水力発電会社と漁業組合との摩擦
3 漁業権設定の壁
専用漁業免許の申請
愛知県における河川漁業組合の展開
条件制限をめぐる攻防
ことの顛末
公益の矛盾と解消手段としての放流事業
4 組合の組織と事業
矢作川漁業組合の組織
組合の共同販売事業と支部制への移行
簗の組合有化
歴代組合長と組合名称の変遷
組合の増殖事業
鈴木茂樹のめざした漁業

第3章 生活世界の中の川漁
1 古き良き矢作川
矢作川の原風景
川辺の風景
暮らしの風景
2 川の記憶
高値で売れた矢作川のアユ
アユの集荷と出荷
タキモの話
プラスアルファとしてのアユ釣りと社会背景
水ごころ雑魚ごころ――子どもの遊びとおかず取り
3 迫りくる変化
ハナウオの季節――瀬付き漁と河床の低下
竿屋の盛衰――釣り具の変化
川からあがった漁師たち――漁業者のライフスタイルの変化
 
第4章 川との距離
1 高度成長期の矢作川
工業化優先の波
破れ挙母が豊田に
矢作川の白濁
2 河川利用の高度化とその管理
河床の低下と農業水利事業
矢作ダム建造とその背景
川の意味的分断
矢水協の設立
矢水協の反公害運動
活動の展開とその波及効果
矢作川方式の確立とその限界
空白の汚濁期
3 サービス漁協への転換
釣りのレジャー化
レジャーとしての萌芽
戦後の漁業法改正
サービス漁協への転換
放流システムの確立
矢作川の再発見

第5章 川と魚の病
1 矢作川の汚濁・歴史と現状
過去の汚濁とは
水質汚濁の環境基準とその見方
水質汚濁にかかわる環境基準施行後の水質
矢作川汚濁の出発点――白濁1
いまも残る汚濁の難題――白濁2
今後も続くであろう汚濁の課題――白濁3
2 川の疲弊
川が緑色に見える
釣師の足の感覚
河床低下
アーマー化
砂利投入実験
学際の場を提供した矢作川
アーマー化も進化する
川の疲弊要因の複合化
3 魚類相変化と不漁続きのアユ漁
淡水魚類相の時代的推移
支川における魚相変化
矢作川における魚相変化
不漁続きのアユ漁

第6章 環境を語る漁協――よく利用され、なお美しい
矢作川の創造をめざして
1 矢作川に流れを取り戻す
ダムに分断された川
矢作ダム建設と河川利用率
古くて新しい問題――明治用水頭首工の河川維持流量
矢作川上流部の発電ダムの河川維持流量改定
三河湾への「水の回廊」を守った河口堰建設反対運動
2 河川環境の改善へ「知」の結集
ヨーロッパ近自然河川工法調査団
豊田市矢作川研究所の設立
矢作川天然アユ調査会の誕生
矢作川「川会議」の発足
矢作川学校の発足
3 河川管理思想の転換
愛知県の矢作川総合管理
中部電力との河川環境定期協議
矢作ダム貯水池総合管理計画検討委員会
矢作川漁協のNPO活動
水利権と河川環境の歴史的妥協

引用文献・参考資料

あとがきにかえて――川の自然に心を澄まして 古川 彰



矢作川総合年表
矢作川漁協協同組合概要

人名・事項索引

[カラーグラビア]
漁業者の見た矢作川
矢作川水系産淡水魚類目録

■書評・紹介記事

「朝日新聞」2004年1月13日(夕刊)
「ダムや農業用水による枯渇、工場排水の水質汚染など、長年傷つけられてきた川の環境の歩みと、それを回復しようとする漁協の活動を紹介し、国のダム政策に警鐘を鳴らしている」

「図書新聞」2004年2月14日 古川彰(インタヴュー:米田綱路)
「……漁協は最初、昔からの漁協のまま、魚を保護する団体として生まれ変わろうとした。けれども、川自身がだめになっているのに、魚を保護する団体のままでは変われない。そこで、漁協は自分たちの活動をNPO的な動きに変えてしまうんです。NPO団体という見立てをすることによって、いままでの矢作川内水面漁協ではない、新たな動きが生まれてきたわけですね」
「……この本の第三章「生活世界のなかの川魚」では、多くの方々の語り口をそのまま収録しています。漁協の一〇〇年史としては異様に見えるかもしれませんが、実はもっとも調査に時間がかかったのがその章です。主に芝村君が聞き取りを続けて書いたのですが、調査を進めるにつれて、だんだんわかってくることがあるんですね。/たとえば「タキモの話」という部分がありますが、タキモという問屋さんにぶつかるまでに、かなり時間がかかったそうです。つまり芝村君は、アユはどこから来てどこへ行ったのかを調べていった。矢作川に放流された稚魚は琵琶湖から買ってきたものですが、その後、釣ったアユがどこへ行ったかを丁寧に聞き取っていくと、問屋さんに行き当たった。電話してみると、まだ存在していた。そこで、その問屋さんから聞き取りをして書いたのが「タキモの話」です。/こういう絶対に文字として残らないようなことが、けっこう川を支えているんです。……」
 
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