短歌ヴァーサス 風媒社
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★短歌ヴァーサスは、11号で休刊になりました★
2004.8.2〜2006.6.30の期間(一時期、休載期間あり)、執筆されたバックナンバーをご紹介します

 
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斉藤倫

 
*(本田瑞穂さんのブログ日記から)

 家族Aがすっかり寝て、家族Bが出かけて、しばらくして完全に静かになったとおもったときに外に出る。夕方からずっと甘いものが食べたくて買いにいきたかった。家族に出かける気配を感じさせたくないから、ABが寝る、あるいは出かけるのをずっと待っていた。こんないなかで、テレビでみる遊園地みたいなケーキはのぞむべくもないが、24時間スーパーのすみにあるケーキカウンターへむかう。

 この道を一直線にゆけば、スーパーの裏の入り口に出る。ここらは最近建ったビル型の住宅が多くて、天辺が平らで屋上がついていたりする。屋上のある家っていいなあ。夜を簡単にみにあがることができる。

 外はぼんやりけぶっている。ずいぶん暖かくなったんだな。

 (松平アナウンサーえらいよねえ、NHK辞めないし、民放へもいかない。もう報道の第一線に戻ることなんて絶対ないのは、本人が一番よくわかっているだろうのに)

 スーパーの自動ドアをはいってケーキカウンターに向かう。
 「あ、ニーチェだ」 「ほんとだ、安ぅーい」
 うしろで声がする。ニーチェ?
 振り返ってみた。
 あ、なんだフルーチェか。フルーチェとニーチェ聞きまちがえるなんて。

 (高知はわたしのNHKの初任地なんです、って松平さん言ってたな)

 ケーキカウンターをながめる。なににしようかな。スポンジ生地のものより、しっとりしたかんじのものが食べたいなあ。ブルーベリーレアチーズケーキにしよう。

 (立つ時はいつも手を前できちんと組んでいるの)

 自動ドアを出て、車の止まっていない駐車場をつっきって歩く。がらがらの夜の駐車場、とても好き。出入り口のチェーンをまたいで路地に出る。月、かさかぶってるなあ。おっと、上ばっかりみてると、つまずいてケーキつぶすよ。

 (番組の最後も松平さんは丁寧におじぎする)

 この角に差し掛かると、いつもぱっとあかるくなる。家の前にセンサーが仕掛けてあるらしい。それで、人を認識すると電気がつく。けっこうあかるい。スポットライトみたい。

 (「今夜もご覧いただきありがとうございました」)

 ふぅ、


 ただいま
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